「009 RE:CYBORG 」 10/31

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見たのは、10/31(水)

会社帰りに渋谷で。

原作漫画は読んだことないし、昔のアニメも知らない。
予告編に惹かれたのが理由です。

見終わったあとは、頭の中に????????????
がいっぱいで、連れもそうだったらしく、
「作中の謎かけを放置したままだよね。」って。

だいたい、事件の解決方法にしたって、説明不足で謎だし、
00ナンバーズも途中でフェードアウトしてその後の消息は不明だし、
主人公がなぜ高校生なのか、とか
彼の声って結局・・??

で、いろいろさかのぼってちゃんと感想を書こうと思ったら、
朝日新聞のサイトに、まさにこれ!そう、これ!
っていう感想文があったので、コピーしちゃおうっと。



朝日新聞デジタル』より。


小原篤のアニマゲ丼』

小原 篤(おはら・あつし)
1967年、東京生まれ。
91年、朝日新聞社入社。
99~03年、東京本社版夕刊で毎月1回、アニメ・マンガ・ゲームのページ「アニマゲDON」を担当。
2012年4月から名古屋報道センター文化グループ担当部長


「008:ピュンマ博士の告白」


どうも、ゼロゼロナンバー・サイボーグの008、ピュンマです。公開中の映画「009 RE:CYBORG」見てくれましたか? 僕の出番、少なかったですよね。さっきも、映画館を出たら前を歩く10代の女性2人組に「メッチャかわいそう!」と同情されてしまいました。今日は、そんな僕の話を聞いて下さい。あ、ネタバレです。

 東西冷戦やベトナム戦争など世界の危機に立ち向かってきた僕たちは、戦いを離れてそれぞれの故国などに散っていたんですが、世界各地で高層ビルが倒壊する連続テロが起き、生みの親ギルモア博士から招集を受けました。博士は、軍産複合体からの利益を図る投資ファンドと世界の覇権を狙うアメリカ政府の陰謀と見ていたそうですが、実は、テロ実行犯たちは「彼の声」なるものを聞き、それに導かれてテロを行っていたのです。僕はアフリカで「天使の化石」を発見し、発掘にあたった作業員たちが聞いたという「彼の声」を知っていろいろ仮説を立てたのですが、イスタンブールに着いてギルモア財団に向かう途中、バザールの雑踏にたたずむ不思議な少女が気になってあとを追ったら、それっきり行方不明。出番は4、5分でした。

 映画を見たら、みんな活躍してましたね。僕と同様、序盤で消息を絶った007のグレート・ブリテンだって、体を透明にしたり変身したりして米国家安全保障局(NSA)の死体サイボーグとやらをやっつける場面があります。でも消えたり伸び縮みしたりするあの背広ってどうなっているんでしょう。あの服も彼の体の一部なんでしょうか。じゃあ彼、ハダカですね、マッパですね。

 009のジョーはやっぱりカッコいいですね。003のフランソワーズともラブラブですよ。3年ごとにフランソワーズに記憶をリセットされ、「18歳」のまま27年間、高校生活を送っていたそうです。でも六本木ヒルズの屋上で、飛行機から飛び降りてきたフランソワーズを見るなり記憶が復活、加速装置で空中キャッチ、そして熱いキッス。いいですね主人公は。

 飛行機に戻ったら、フランソワーズが下着姿のナイスバディで抱きついてきます。いいですね、サイボーグはプロポーションが変わらなくて。僕も脱いだらスゴイんです。知ってました? それにしても彼女、シナを作りながら「また私だけ三つもトシをとってしまったわね」なんて…「また」ですよ、「また」! 3年ごとにウブなジョーを食っちゃってたんでしょうね。役得ですね。

 実はジョーは、記憶が戻る前「彼の声」を聞いてテロを実行しかけていて、フランソワーズはギルモア博士に「なぜ監視を怠った?!」なんて怒られて、口ごもってましたね。そりゃそうでしょう、ジョーの脳内に自分の分身であるバーチャル美少女トモエを住まわせて、恋愛シミュレーションを楽しんでいたんですから。目の前にいるのが、自分にしか見えない脳内彼女だったなんて、ジョーもかわいそうです。フランソワーズが24時間監視をしなかったのは、トモエにアクセスした時のリアルなときめきを損なうのがイヤだったんだろうと、僕は推測してます。え、邪推ですって?

僕はジョーのすぐ前にサイボーグ手術を受けたのに、どうして加速装置がないんですかね。爆撃機から発射されたミサイルだって、加速装置を使えば空に停止したように浮かんでるだけ。ジョーは華麗に次から次へとミサイルに飛び移り、光線銃で瞬殺です。スピーディーでダイナミックなカメラワークと超スロー映像のメリハリは、フルCGの威力を存分に発揮してますね。ここと、爆撃機を追う戦闘機のドッグファイト、そして核爆発の火球からジョーが超高速走行で脱出する場面が映像の見どころです。――え? いやぁ、実は映画とかアニメ、好きなんです。好きな監督? ぉ、押井さんかな……別にいいじゃありませんか、いけないんですか?

 企画当初は神山健治監督じゃなく押井守さんが監督する予定だったらしいですね。でも神山さんによると、押井さんは001のイワンを犬にしてフランソワーズを58歳にしてジョーは18歳で、あとの6人はすでに死んでいて、という方向でやりたかったそうです。どっちにしろ、僕は出番が少ない運命だったんです。僕もグレートも、姿を消してあの世界を支える石像かなんかになってたんですよ。これ、押井監督の「ビューティフル・ドリーマー」。分かります?

 そうそう、さっきの爆撃機のシーンですけど、最初のミサイルを打ち落としたのはいいですが、そのあと翼につかまりながら002のジェットとジョーが政治談義をしているうちに核ミサイルの発射を許してしまったのはいただけないですね。「専守防衛のオマエがなんでリーダーなんだ」とか「アメリカの正義が正しいのか」とか、別にいいじゃありませんか。

 しかしジェットの体ってスゴイですね、脇やスネがボウボウですよ。毛じゃなくて、体のあちこちのノズルからジェット噴射がボウボウ。そういえば飛行時はマッパですね。マッパでマッハ……プッ! おやじギャグですみません。股間がツルツルだったけどあれでいいんですかね、クオリティー・オブ・ライフ的に。ジョーとフランソワーズみたいなコトはないってわけ? リーダーの座を巡ってジョーと確執とか言うけど、本当の原因はコッチじゃないんですか。オレが受け専門で、専守防衛のアイツがなんで攻めなんだ、とか。

 ……え? 下品? せっかく「彼の声」や「神とは何か」について押井さん風のペダンチックな論を立てたのに披瀝(ひれき)する役は004のハインリヒにとられちゃって、しかもあんな戦闘専門のやつに「短絡的に過ぎるきらいはある」とか論評されちゃった僕に、誰も文句は言えないと思いますよ。

 あと文句ついでに言っときますけど、発射された弾道ミサイルを直接爆破しに行くというジョーを、「それじゃ大気圏から帰還することはできない」とフランソワーズが引き留めるけど、あれは「大気圏外」が正しいんじゃないですかね?! 僕の聞き違い? あとハワイ沖とイスタンブールが同時に夜だったけど、時差は12時間くらいあるんじゃないんですか?!

 ええ、ええ、いいんですよどうせ僕なんか。パンフレットのプロフィルだって、ほかのみんなは出身がどこかの国になってるのに僕だけ「アフリカ」ですよ。大陸ですよ! どんだけ大雑把なんだか。能力は「深海活動」で所属は「考古学者」、つまり海に潜るか穴に潜ってろってことでしょ。その能力だって、僕ひとりだけ使わせてもらえなかったんだから。髪だってチリチリだから、ハゲのグレートと同じくらいレンダリングが楽だったでしょ! 僕の貢献なんてそのくらいなんだ……。

 結局「彼の声」様が何をしようとしていたのか、まさか世界の破滅を用意してそれにあらがう戦士を作り出すなんてマッチポンプじゃないとは思うけど、ラストでみんなに水の上を歩く能力を授けたのは、僕へのイヤガラセですか? みんな水の上をスイスイ歩いて、僕が水に入れなかったら僕のいる意味ないじゃありませんか?! こういうの日本じゃ「陸に上がった河童(かっぱ)」って言うんでしょ?

 いつから切れキャラになったのかって? 僕はキレてないっ!!



以上。

朝日新聞デジタル』より。

小原篤のアニマゲ丼』

「008:ピュンマ博士の告白」小原 篤 著(おはら・あつし)